玄関のたたき

玄関のたたき

よくある造りではあるが、僕の家の玄関のたたきはコンクリートで固められ、ちょっとした遊び場になっていた。

当時はまだ道路など舗装化されていない場所も数多く、コンクリートのような凹凸のない平らな遊び場が少なかった。だから家の玄関のような平らな場所が遊び場になってしまうのである。

ビー玉やミニカー、メンコなど、平らな面を生かした遊びには絶好の場所であった。また、夏場の暑い時には玄関がたまたま日陰になるので、コンクリート部分に腰掛けると冷たくて心地よかった。時には冷たすぎてお尻が痒くなってくる事もあった。寒暖の差が大きな地でもあったので、朝方の陽が当たらない玄関は夏場でも寒く感じる時もあったくらいである。

また、当時はどこの家でも夏場になると玄関ドアを常に開け放していた。だから家の中は常に風が通り、気持ちが良かった。もちろんどこの家でも施錠なんかしていない。ちょっと近所に買い物に行くにしても、鍵なんかかけずに出かけていた。だから他所の家に上がりこむ事だって可能だった。さすがに無断で上がる事はなかったが、暗黙の了解みたいな部分で信頼関係が働き、また隣近所がお互いに監視役になっていたのかもしれない。それだけ近隣同士の距離感が近かったのである。

夕方になれば、玄関のたたきのところで母がよく近所のおばさんと夕食の献立について話をしていたのも覚えている。

どこの家にもある玄関。当時は賑やかな老若男女の社交の場と化していたのである。