石油ストーブ

僕が子供の頃はエアコンなんてなかった。だから冬の暖房器具というと炬燵かストーブであった。ストーブは石油(灯油)ストーブであり、小学校高学年にもなると、買い置きしたポリタンクに入った灯油をストーブのタンクに補充するのが僕の役割であった。
灯油のストーブは暖かくなるまで時間が掛かる。当時は自動着火ではなかったから、マッチ棒に火をつけてストーブのコイル(網)の下にある芯に直接着火してたと思う。着火してからコイルというか網の部分が赤々としてくるまでになんだかんだで5分近くかかっていたと思う。田舎の冬は厳冬のため、この待っている時間が本当に長く辛く感じた。
ストーブの上は物が置ける(本当は置いてはいけないものだが)ので、必ず夜間に水を入れて沸かしていた。沸騰してくると蒸気がシューシューと鳴って、コトコトとやかんの蓋も音を立てる。その湧いたお湯でお茶を飲んだりしたものである。ストーブで沸かしたお湯はガスレンジで沸かしたお湯よりもとても熱く、なかなか冷めなかった。
よく母にストーブの周りで走ったりはしゃいだりすると怒られた。子供心にもこの熱湯を被ったら大変なことになると感じていた。だから遠くではしゃいでいてもストーブの近くに来ると、スローダウンしたりして静かに過ごしていた。
ストーブの上ではお湯を沸かすだけではなく、アルミ箔を置いてその上で餅を焼いたりもした。ちょうど良い具合に焼けるのだ。餅はガスコンロやオーブンで焼くより、ストーブで焼く方がうまい!と僕は思っている。
とにかく我が家にとってストーブはなくてはならないものであった。今では石油ストーブ自体を見かけなくなってきたが、実家ではまだ現役である。何が良いのかというと、僕にとってはこの石油の焼ける匂いである。この石油ストーブの匂いを嗅ぐと、冬の日の一家団欒で過ごした暖かい部屋を思い出すのだ。