振り子時計

振り子時計

父方の祖父母の家には古い振り子時計が掛けてあった。遊びや泊まりに行った時には、必ず定時になるとボーン、ボーンという音が鳴り、その度に古時計を見上げたものである。

たまに叔父さんがゼンマイみたいなものを回していた。時計の針を調整していたのかもしれない。なぜ振り子は電池でもないのに毎日毎日左右に動けるのだろうかと不思議に思って見ていた時期もある。

たしか国語の授業でも「チックとタック」という童話的な物語があったので、小人が住んでいると本気で思っていた時期もあった。

しかし、あのコチコチという振り子の音は、自分を内面世界に引き込む不思議な音であった。なぜか落ち着くのだ。とくに静かに何か夢中になっている時ほど、振り子の音が心地よく頭の中に浸透してくる。人によってはイライラする人もいるらしいが、僕にとってはとても落ち着く不思議な魅力を持った音であった。

当時の田舎は日中でも静かであり、時折北風が吹き抜ける音や野良犬の吠える音くらいしかしなかったが、そんな中で時を刻む振り子のコチコチという音は、まるでBGMのように家中に優しく浸透していた。

今でも振り子時計の音は鮮明に頭の中に残っている。振り子時計の音を思い出す度に、古民家の独特な陰湿な匂いと、土間の土っぽい匂い、そして静かな時の流れを感じるのである。