腕時計

まだ小学校に入学する前、つまり保育園の頃だが、やたらと腕時計に憧れたのを覚えている。大人が腕にはめている腕時計が欲しくて欲しくてたまらなかった。もちろん高価なものだったので、買ってもらえるわけはない。だから駄菓子屋のクジの景品で貰えるオモチャのカラフルな腕時計でも憧れた。こちらもクジなので、当然すぐに貰えるものではない。だから、僕はよく手首に油性のマジックで時計とベルトを描き、友達同士で遊んでいた。母親にはよく叱られたものであるが。
一番最初に本物の時計を買ってもらったのは、高校入学の時に祖母が買ってくれたクォーツの腕時計である。初めて腕にはめた時にズッシリと重かったのを覚えている。家に帰っては時計を机の上に置き、ずっと眺めていた記憶がある。その機械的な動きや硬質な輝き、見ているだけで飽きなかった。
男の子がスポーツカーに憧れるような感覚だろうか。その後自分で初めて買ったのは、19歳くらいの時であったと思う。ジバンシーのファッションウォッチだ。あれから現在までいくつ腕時計を買い替えただろうか。今だに腕時計に対する想い入れは冷めてない。考えてみれば幼少の頃からの憧れは、大人になった今でも続いていることになる。今でも腕時計は大好きだ。