シロクマ

シロクマ

いつの日か覚えていない。その真っ白な美しい毛並みと子供の目線くらいの高さの立派な体格をした犬が神社に居つくようになったのか。

大きな犬だったから、僕たちは最初の頃は近寄り難かった。でも、その犬はそんな僕らを察してか、いつも穏やかな顔をして僕たちの後を付いてきた。いつの間にか僕たちの友達になっていた。とにかく頭の良い犬で、僕たちに他の凶暴そうな野犬が近付いてくると、ものすごい形相で吠え出し野犬を追い払ってくれた。気は優しくて力持ちといった具合だ。いつしか学校のアイドル犬になっていた。誰彼ともなくシロクマと呼び始めた。

いつだったろうか、神社の縁の下で子犬の泣き声が聞こえてきた。行ってみるとそこにはシロクマが大事そうに5匹の生まれたての子犬を抱えていた。その時僕らは初めてシロクマが雌犬だと知った。それからは休み時間の度に子犬の様子を見に通いつめた。その後子犬達がどうなったのかは記憶が定かではない。しかしシロクマのことは覚えている。

ある冷たい雨が降っている日に神社の片隅で雨に打たれてシロクマは死んでいた。僕たちは大事な友の死を受け入れるのに時間がかかったが、卒業するまで神社の片隅のお墓に水を供え続けた。