駄菓子屋「にしな」

当時、僕らが通える範囲では駄菓子屋は一軒しかなかった。或いは他を知らなかっただけなのかもしれない。
とにかく、その駄菓子屋は人気でもあった。おばあさんが一人でやっていたのだが、後に息子夫婦が店番をやるようになった。
駄菓子の類いはもちろん、プラモデルからゲーム機、文房具まで売っていた気がする。夏にはカキ氷、冬にはおでんもあった。特におでんは本格的で、駄菓子屋で作ったものとは思えないくらい美味かった。大人もわざわざ買いに来るくらいである。
また、道を挟んで銭湯が真向かいにあるので、銭湯の帰りに立ち寄ることも多かった。
いつ行っても顔見知りがいるので、僕等の社交場と化していた。大人になってから、たまたま近くを車で走ったが、残念ながら駄菓子屋だった場所には近代的なビルが建っていて、駄菓子屋の気配もなかった。